一期一会
おじいさんは
遠い目をして
若かりし頃に見た
海の美しさを
静かに語った
/波照間島・ペムチ浜:2006年夏
先月1ヶ月間、初ソロ写真展を開催したが、
その会場だったカフェのママさんから電話。
会期が終わってから、
常連のおじいさんが写真がほしいと
言ってきてくださったそうだ。
その方とは、オープン初日にお目にかかり、
最初に写真について会話した方で、
かつ、印象深い出会いだったので、うれしい。
おじいさん、昔船乗りだったとのことで
海の写真などを見てとても懐かしがっていらっしゃった。
「こんな空を見た、あんな海を見た。
自分もそのときカメラを持っていたら
素晴らしい風景を残せたかもしれない」と
美しい色合いを見せる空や、激しい海・凪いだ海の話を
いろいろ聞かせてくださった。
そしてまた、私が髪を後ろで一本にまとめている姿が
子どものころ亡くなった母親の姿を思い出すと
しみじみ語られた。
おじいさんになっても、
幼い少年の頃からの
母を求めるさびしい心を持ち続けていらっしゃると思うと
切なくなった。
私の仕事の関係者さんたちが会場まで打ち合わせに来るまでの
短い時間の会話ではあったが、
heart to heart で、暖かいものが通い合う時間だった。
おじいさんもそう感じてくださったのか、
関係者さんたち&私にコーヒーをご馳走してくださった。
恐縮してしまったと同時に、
会期中のいろいろな方とのコミュニケーションを予感させる
うれしい気持ちがあった。
その後の会期中、おじいさんは定期的に来店していたようだが
私とは日程が合わず、「一期一会だなぁ」と思っていた。
そんな出会いだったから、
その方が私の切り取った風景で心和ませてくださるのは
とても光栄なのだ。
おじいさんの心の記憶の箱の中には、
もっともっとたくさんの素晴らしい海と空の風景が
たくさんあるに違いない。
私の写真を眺めることが、
そのたくさんの思い出へのアクセスキーになり
おじいさんが幸せな気持ちになれるのなら、
それほどうれしいことはない。
感謝・・・